定年を迎えたあとも、まだまだ働ける。社会と関わっていたい。そんな思いから「再雇用」という道を選ぶ方が増えています。しかし、「特別支給の老齢厚生年金」と「仕事の収入」のバランスについて、きちんと理解できている人は、意外と少ないのが現実です。
再雇用されながら年金を受け取ることはできるのか? 受け取れるとしても、満額ではないのでは? そして、その支給額はどのように計算されるのか? この記事では、そんな疑問にお答えしながら、実際に起こりうるケースや注意点について、丁寧にお話ししていきます。
「特別支給の老齢厚生年金」とは何か?
まず基本として知っておきたいのが、「特別支給の老齢厚生年金」の仕組みです。これは60歳から64歳までの間、一定の条件を満たしている人に支給される年金で、いわば“定年後すぐに支給される年金”とも言えます。
対象となるのは以下のような方です。
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男性なら昭和36年4月1日以前生まれ
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女性なら昭和41年4月1日以前生まれ
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老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上
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厚生年金保険の被保険者期間が1年以上
つまり、現在60代前半の人のなかには、この特別支給の年金を受け取る権利がある人が多くいるというわけです。が、ここに“ひとクセ”あるルールが存在します。
「働く」と「もらう」は両立できるのか?
年金制度と聞くと、「働かなくなった人がもらうもの」というイメージを持っている人も少なくありません。しかし現代は違います。
再雇用や定年後のアルバイト・パートなど、「働き続ける」という選択をする高齢者が増えています。もちろん、再雇用されている場合でも、特別支給の老齢厚生年金を受け取る資格はあります。
ただし、注意しなければならないのが“収入の壁”です。
2024年度からのルールでは、「月の賃金」と「年金の支給額」の合計が【48万円】を超えると、その超過分の一部、具体的には超えた金額の半分が年金から減額されることになります。
たとえば──
仮にあなたの月収が45万円で、年金が10万円だった場合、合計は55万円になります。このうち48万円を超える部分は7万円。この7万円のうち半分、つまり3万5千円が年金から引かれてしまうのです。結果として、年金は10万円満額ではなく、6万5千円しか支給されないということになります。
「せっかく年金がもらえると思っていたのに、こんなに減るなんて…」
こう感じる方もきっといるはずです。
でも、制度としては、「収入が一定以上あるのなら、まずはその収入で生活してね」という考えがベースにあります。逆に言えば、収入が少ない場合は、年金をしっかり受け取ることができる、ということでもあります。
「50万円の壁」もある? 新ルールに要注意
さらに見逃せないのが、2022年以降に導入された「月収50万円超」のルールです。これは65歳未満の人が対象で、月収が50万円を超える場合には、やはり年金の減額が発生します。
つまり、48万円と50万円の2つの基準があるわけですが、これは「在職老齢年金」と「特別支給の老齢厚生年金」での扱いが違うからなんですね。
このように、制度が複雑に絡み合っているため、年金の受給額を正確に把握するためには、最新の情報をしっかりとチェックし、自分の働き方と照らし合わせて考えることが重要になります。
失業保険との併用はできない? 盲点になりがちな注意点
意外と知られていないのが、「雇用保険(いわゆる失業保険)」と「年金」との関係です。
「退職したから、しばらくは失業給付をもらいながら次の仕事を探そう」
そんなふうに考えて、ハローワークに出向く人も多いと思います。けれど、ここに落とし穴があります。
実は、「特別支給の老齢厚生年金」と「失業保険の基本手当」は同時に受け取ることができません。もしも失業保険を受給している間は、年金の支給が一時的にストップされるのです。しかも、基本手当の金額にかかわらず、“全額支給停止”になります。
これを知らずに手続きを進めてしまい、あとから「えっ?年金止まるの?」と驚かれる方も少なくありません。
計画的に考えることが、これからの安心につながる
私たちは、これからますます“人生100年時代”を生きていくと言われています。働く期間が延びる一方で、年金制度は複雑化し、「知らなかった」では済まされない時代になりました。
「再雇用で収入が増えて安心」と思っていても、年金の支給が減っていたら、実質的な手取りは思ったほど増えていないかもしれません。
大切なのは、“今の自分の働き方に、どんな年金ルールが適用されるのか”を正確に把握することです。そして、これからのライフスタイルや家計を見据えながら、ベストな選択をしていくこと。
会社に確認する、年金事務所に相談する、場合によってはファイナンシャルプランナーに頼ることもひとつの手段です。
最後に
人生の後半戦は、誰にとっても初めての経験です。不安も迷いもあって当然。でも、だからこそ、ひとつずつ知識を積み重ね、納得しながら前に進むことが大切です。
特別支給の老齢厚生年金という制度は、あなたのこれからの暮らしを支える大切な仕組みです。しっかりと理解し、活用することで、より安心してセカンドライフを歩んでいけるはずです。
これを読んだあなたが、「なんとなく不安」だった気持ちを、「ちゃんと備えよう」という前向きな一歩に変えてもらえたなら、この記事を書いた意味は十分にあると思っています。
未来の自分に「ありがとう」と言ってもらえるように。
今こそ、行動を起こすときです。
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