人生100年時代。定年後も何かしら働き続けたいと考える人は少なくありません。健康のため、社会とのつながりのため、あるいは単純に「まだまだ収入が必要だから」。そんな中で、多くの人が直面するのが「在職老齢年金」というちょっとややこしい制度です。
「働いたら、年金が減る?いや、ちょっと待って。そんなバカな話ある?」——そう思ったあなた、実はとても自然な反応です。けれど、日本の年金制度は、「働くシニア」に対して一種の収入調整を課しているんです。
この記事では、制度の仕組みから、実際の体験談、そして“損をしない働き方”のコツまで、丁寧に、でも読みやすく解説していきます。知っておくだけで、老後の生活設計がずいぶんと変わってくるかもしれません。
年金と給料、合わせて月50万円がカギ
まず大前提として、在職老齢年金の対象になるのは「厚生年金に加入しながら働いている60歳以上の人」です。これには70歳以上であっても、厚生年金に加入していれば含まれます。
肝になるのは、「年金(月額)」と「給料・賞与(月額換算)」の合計が50万円を超えるかどうか。このラインを超えた場合、一定の割合で年金が減額されてしまうんですね。
たとえば、月の年金が10万円、給料と賞与の月額換算が38万円なら合計48万円。50万円以下なので年金は全額支給されます。でも、給料が48万円に上がると合計58万円。50万円を超えた8万円の半分、つまり4万円が差し引かれて、年金の受給額は6万円になってしまいます。
ちょっとした昇給やボーナスで、まさかの“手取り減少”。これを知らずに働き続けてしまうと、後からショックを受けることも…。
60代はチャンス?支給停止基準の緩和
2022年からは制度の大きな転換点がありました。以前は60~64歳は28万円、それ以上の世代は47万円という異なる基準が存在していたのですが、今はどの年代も一律「50万円」となっています。
この変更によって、60代前半で働く人たちにも、かなりの自由度が与えられた形になります。「昔の制度で損した気がする…」という声も聞かれますが、いま働き始める人には有利な環境が整ったと言えるでしょう。
“非加入”という抜け道も存在する
この制度のもう一つの特徴は、「厚生年金に加入していること」が条件であるという点。裏を返せば、加入していなければ収入に関係なく年金は減らされないのです。
たとえば、週20時間以下のパートや、業務委託のフリーランス、個人事業主などは厚生年金に入らない働き方。こうした形態を選べば、働いた分を丸ごと受け取りつつ、年金も満額もらえるのです。
「なるほど、じゃあパートでゆるく働こうかな」と考える人も多いでしょう。でも、その分、将来の年金が増える可能性はゼロ。ここは収入と将来設計の“天秤”が必要になってきますね。
現場のリアルな声——「損したくない」からこそ工夫する人々
実際に、この制度とどう付き合っているのか?いくつかの事例を見てみましょう。
65歳のAさんは、老齢厚生年金が10万円、老齢基礎年金が5万円。パートで月12万円働いていますが、厚生年金に加入していないため、年金は減らされません。「パートは時間の融通も利くし、体も楽。しかも手続きも簡単で、年金も満額もらえてる」と満足そう。
一方、62歳の会社員Bさんは、月給30万円に加えて賞与が年60万円。合計の報酬月額は35万円、年金が12万円で、ギリギリ50万円以下。彼女は「4〜6月の残業を調整したおかげで、標準報酬月額を抑えられた」と語ります。ちなみに、この“4〜6月”というのは、標準報酬月額が決まる基準期間。ここでの給与を意図的に調整することで、年金への影響を抑えることができるのです。
さらに一歩進んで工夫しているのが、中小企業の経営者Cさん。役員報酬を100万円から28万円に下げ、残りは賞与で調整。「報酬総額は変わらないのに、年金は全額もらえるようになった。専門家に相談してよかった」と実感を語っています。経営者ならではの柔軟さを活かした戦略ですね。
「失業給付と年金の併給NG」って知ってた?
一方で、意外と見落としがちなのが「雇用保険との関係」です。失業給付を受けている期間は、なんと年金が全額ストップされてしまうんです。
「えっ、働いてないのに?なんで?」と感じるかもしれませんが、制度上「失業給付も所得とみなす」という考え方があるためです。63歳で退職したDさんは、これを知らずに驚いたそう。「支給停止分の調整もなかった」とのことで、制度への不信感も…。このあたり、事前に知っておくことの大切さがよく分かりますね。
どうすれば“損せず”働ける?具体的なコツ
では、「働きながらも年金を減らしたくない!」という人はどうすればいいのでしょうか?実践的なポイントをいくつか紹介します。
まず、自分の年金月額を把握すること。これは「ねんきんネット」で簡単に確認できます。その金額をもとに、50万円の壁を超えないよう給料+賞与を逆算して調整する。たとえば、年金が18万円なら、残り32万円までがセーフライン。
次に、4~6月の残業は控えること。標準報酬月額が決まるこの期間は、“おとなしくしておく”のが得策です。
そして、「厚生年金に加入しない働き方」を検討するのも手。収入が多少下がっても、年金が満額出るなら、結果的に手取りは変わらないかもしれません。
また、経営者や役員の立場なら、報酬の支払い方を工夫することで賢く制度を利用できます。ただし、報酬の変更には株主総会の決議など、いくつかの手続きが必要になるため、専門家への相談はマストです。
今後どうなる?「50万円の壁」見直しも議論中
ちなみに、2025年以降の制度改正に向け、「50万円の壁」そのものを見直す動きも出ています。基準額の引き上げや、制度の撤廃案まで議論されており、今後さらに働きやすい環境になる可能性も。
でも、現時点ではまだ確定していません。制度は“使いこなす”もの。まずは今あるルールを知り、その中でどう立ち回るかが大切です。
まとめ:知っていれば、人生はもっと選べる
在職老齢年金制度は、確かにちょっと複雑です。知らずにいると損をする。でも、知ってさえいれば、自分らしい働き方と安定した生活を両立させることができます。
働く理由は人それぞれ。でも、せっかく働くなら、「損しない」選択をしたいですよね。
自分にとっての“ちょうどいい”働き方とは何か。それを考えるための一歩として、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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