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夫婦で年金をもらうようになったとき ~リアルな体験から学ぶ老後資金計画~

「定年後の生活」―― このフレーズを聞いて、あなたはどんなイメージを描きますか? のんびりと趣味を楽しむ穏やかな日々? それとも、経済的な不安を抱える厳しい現実?

実は私、昨年父が定年を迎え、両親が揃って年金生活に入ったんです。その準備段階から現在までの様子を間近で見てきて、「あぁ、年金生活って、思っていたのとちょっと違うな」と感じることが多くありました。

今日は、「夫婦で年金をもらうようになったとき」というテーマについて、日本の実情と、身近な体験を交えながらお話ししたいと思います。これから年金生活を迎える方はもちろん、まだ先だと思っている若い世代の方にも、ぜひ知っておいてほしい内容です。

目次

年金生活の始まり ― 我が家の場合

父が65歳になる少し前、自宅のダイニングテーブルで両親が真剣な表情で書類を広げていた光景が、今でも鮮明に記憶に残っています。

「これからどうやって暮らしていくか、計算してるんだよ」

そう言った父の表情は、少し不安と期待が入り混じったものでした。33年間勤めた会社を定年退職し、これから本格的な年金生活に入る。その前夜の、緊張感のある瞬間でした。

母は専業主婦として家庭を支えてきました。父は中小企業の営業部長として働き、それなりの厚生年金を積み立ててきた様子。でも実際にいくらもらえるのか、それで本当に生活していけるのか―― その日の夜、私も交えて家族会議が開かれました。

「お父さんの年金が月17万円、お母さんが6万5千円。合わせて23万5千円。家のローンはあと5年で終わるから、それまでが勝負だな」

父は電卓を片手に、シミュレーションを繰り返していました。それまで月50万円以上あった収入が、半分以下になる現実。私は「大丈夫かな」と心配になりましたが、両親はどこか晴れやかな表情も見せていました。

「やっと自分の時間ができる」 「趣味に使える時間が増えるね」

長年の労働から解放される喜びと、これからの経済的な不安が入り混じる。年金生活の始まりは、そんな複雑な感情の交差点なのかもしれません。

年金の基本的な仕組み ― 知っているようで知らない

両親の話を聞きながら、私自身も年金の仕組みについて改めて勉強しました。意外と知らないことが多くて驚いたんです。みなさんはどうですか? 年金制度、ちゃんと理解していますか?

日本の年金制度は、基本的に「2階建て」になっています。

1階部分が「国民年金(基礎年金)」で、20歳から60歳までの全国民が加入義務を負います。2025年時点での満額受給額は、月約6.8万円。ただし、これをもらうためには40年間きちんと保険料を納めないといけません。未納や免除の期間があると、その分減額されてしまうんです。

2階部分は「厚生年金」で、会社員や公務員が加入します。給料や勤続年数に応じて金額が決まりますから、高給取りで長く勤めた人ほど、多くもらえる仕組みです。

「あれ? お母さんは専業主婦だったけど、年金もらえるの?」と私が聞くと、母は笑いながら説明してくれました。

「私は『第3号被保険者』って言うのよ。会社員の配偶者で収入が少ない場合、自分で国民年金の保険料を払わなくても、基礎年金がもらえるの」

なるほど、これが「第3号被保険者制度」というものなんですね。専業主婦(夫)が多かった時代の名残で、今では見直しの議論もあるそうです。

さらに、両親の場合は「加給年金」というボーナスもついていました。厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者がいる場合、年約39万円が加算されるんです。ただし、配偶者が65歳になると「振替加算」として一部が配偶者の年金に移行するという、なかなか複雑な仕組み。

「お父さんが会社員じゃなくて自営業だったら、こんなに年金もらえなかったよね」と父が言うと、母も深くうなずいていました。確かに、夫婦の働き方によって、年金額は大きく変わってくるんですね。

夫婦で年金を受給する際のポイント ― 父と母の場合

両親の様子を見ていて、夫婦で年金を受給する際には、いくつかの重要なポイントがあると気づきました。

年金額の事前確認が必須

父は定年の5年前から、毎年送られてくる「ねんきん定期便」を丁寧に保管していました。その青いハガキには、将来受け取れる年金の見込み額が記載されています。最近では「ねんきんネット」というオンラインサービスでも確認できるようになったそうです。

「思ったより少なかったから、会社を辞める前に年金事務所に行って、詳しくシミュレーションしてもらったんだ」と父。

年金事務所では、保険料の納付状況や勤務記録をもとに、より正確な受給額を教えてくれるそうです。両親は夫婦そろって相談に行き、将来の生活設計を立てる材料にしていました。

「一般的に夫婦の老後の生活費は月20~25万円必要と言われているけど、実際はその地域や生活スタイルによって全然違うからね」と母。自分たちの場合は、住んでいる地方都市の物価や、持ち家であることを考慮して、月22万円が目標だと決めたそうです。

受給開始時期の工夫

「実は私、年金の受給開始を67歳に遅らせたのよ」と母が教えてくれたのは、受給開始時期の選択が重要だということ。

通常、年金は65歳から受給開始ですが、「繰り上げ受給」(60~64歳)や「繰り下げ受給」(66~75歳)も選べます。繰り上げると減額、繰り下げると増額されるんです。

「お父さんは会社を辞めてすぐに収入が必要だったから65歳から満額受給。私は少し遅らせて67歳からにしたら、8.4%増えるの」

こうした夫婦間での受給時期の調整は、世帯全体の収入を最適化する賢い方法なんですね。特に、厚生年金が多い配偶者の繰り下げ受給は、長生きするほど得になるそうです。ただし、「繰り上げ受給は減額が一生続くから、よほどのことがない限りおすすめしない」というのが両親の意見でした。

税金や社会保険料のサプライズ

「最初の年金が振り込まれた時はショックだったよ」と父が苦笑いしながら教えてくれたのは、手取り額の意外な少なさでした。

「計算では月23万5千円のはずだったのに、実際に振り込まれたのは21万円ちょっと。所得税や住民税、それに国民健康保険料や介護保険料が天引きされていたんだ」

年金も立派な所得ですから、一定額以上だと課税対象になります。さらに、社会保険料も天引きされるため、実際の手取り額は思ったより少なくなるケースが多いようです。

「税金や保険料のシミュレーションもしておくべきだったね」と両親は反省していました。最近では、こうした天引き額も含めた「手取りシミュレーション」を提供する年金相談も増えているそうです。

生活設計の大幅な見直し

年金生活が始まって一番大きく変わったのは、やはり「お金の使い方」だったようです。

「固定収入になるから、使えるお金の上限が決まってくる。でもこれが意外と心地いいんだよね」と父。

両親は年金生活に入る前に、以下のような見直しをしていました:

  • 住居費:持ち家のローンはあと5年。完済後は固定資産税と修繕費のみに。
  • 医療費:父は高血圧、母は関節痛の持病があるため、月1万5千円を予算計上。
  • 趣味費:父の釣り、母のガーデニングに各5千円。
  • 交際費:月1万円に抑える(以前の半分以下)。
  • 旅行費:年に1回の国内旅行のために、月1万円を積立。

「収入に合わせて生活をスリム化する。若い頃からこの感覚で貯金していれば、もっと老後資金が貯まっていたかも」と母。なるほど、年金生活は「固定収入内でやりくりする」という、ある意味原点回帰の生活術が求められるんですね。

注意点 ― 両親が直面した現実

年金生活を始めて1年半が経った両親が、特に気をつけるべきだと教えてくれたポイントをいくつか紹介します。

年金だけで生活するのは難しい

「正直言って、年金だけで余裕のある生活を送るのは難しいね」と父は率直に語ります。

両親の場合、夫婦で月23万5千円の年金があり、全国平均(20~25万円程度)と比べても悪くない方です。しかし、家のローン返済やたまに必要になる車の修理費、予期せぬ医療費などを考えると、貯金を取り崩さざるを得ない月もあるとのこと。

「だから私、週3日スーパーでレジ打ちのパートを始めたの」と母。月に5万円ほどの収入を得て、家計の足しにしているそうです。

日本の平均的な年金額では、特に都市部では生活費をカバーしきれないケースが多いようです。そのため、健康なうちは短時間のパートタイムで収入を補ったり、趣味を活かした小商いをしたりする「年金プラスアルファ」の生活が現実的なようです。

「60代のうちに稼げるだけ稼いでおこう。70代、80代になってからじゃ体力的にも厳しくなるからね」と父の言葉には切実さがありました。

遺族年金の複雑さ

ある日、母が真剣な表情で「もしお父さんが先に亡くなったら、私の年金はどうなるの?」と質問していました。これは多くの夫婦が直面する不安ですよね。

調べてみると、配偶者が亡くなった場合、遺族年金や寡婦年金が受給できる可能性があるものの、その条件は意外と複雑です。婚姻期間や年齢、所得状況などによって変わってくるんです。

「年金事務所で相談したら、私の場合は夫の厚生年金の4分の3を遺族年金として受け取れるけど、自分の国民年金とは併給できないって言われたわ」と母。

つまり、自分の国民年金と夫の遺族年金を比較して、金額が多い方を選ばなければならないんですね。この制度を「併給調整」と言うそうです。

「逆に私が先に亡くなった場合、お父さんは遺族年金をほとんど受け取れないって知ってた?」と母の言葉に、父も私も驚きました。男性の場合、妻の遺族年金を受け取るハードルが高く、条件も厳しいようです。

「夫婦の年金は、どちらが先に亡くなるかでも大きく変わってくる。これも事前に知っておくべきだね」と父。確かに、将来の不安を減らすためにも、こうした知識は大切ですね。

制度変更の可能性

「年金制度って、将来変わる可能性があるから不安」と母がため息をつきました。高齢化が進む日本では、年金制度の持続可能性が常に議論されています。

「受給開始年齢が68歳に引き上げられるかもしれないとか、マクロ経済スライドでさらに減額されるとか…」と父も心配そう。

確かに、これから年金を受け取る世代にとっては、制度変更のリスクは常にあります。両親は「最新情報をこまめにチェックして、柔軟に対応するしかない」と割り切っていましたが、若い世代はより一層の自助努力が必要になるかもしれませんね。

実際の体験談 ― 他の夫婦はどうしている?

両親の友人たちも続々と年金生活に入り始め、時々集まっては情報交換をしているそうです。その中から、特徴的な2組の夫婦の事例を紹介します。

Aさん夫婦の場合(会社員+専業主婦)

父の同僚だったAさん(68歳)は、大手企業で35年間働いた後、3年前に定年退職しました。奥さん(66歳)は専業主婦で、東京郊外の持ち家に住んでいます。

年金状況

  • 夫:月18万円(厚生年金+国民年金+加給年金)
  • 妻:月6.5万円(国民年金+振替加算)
  • 合計:月24.5万円

Aさん夫婦は、年金受給前にファイナンシャルプランナーに相談し、生活費を月23万円に抑える計画を立てました。夫は65歳で受給開始、妻は繰り下げ受給(67歳まで)を選び、年金額を少し増やす工夫をしたそうです。

しかし、実際に年金生活が始まると、想定外の出費が続きました。長男の結婚式、次男の海外留学支援、そして何より医療費の増加。「若い頃にもっと貯金しておけばよかった」と後悔しつつも、Aさんは近所で週2日のパート(月5万円)を始め、生活に余裕を持たせる努力をしています。

「年金だけでは趣味や突発的な出費に対応しにくい。事前にシミュレーションして、収入源を確保しておくのが大事だと実感した」というのがAさん夫婦の教訓です。

Bさん夫婦の場合(自営業+パート)

母の友人のBさん夫婦は、地方都市で小さな工房を営む自営業者。夫(70歳)と妻(68歳)はともに国民年金のみで、賃貸アパートに住んでいます。

年金状況

  • 夫:月6万円(国民年金、未納期間あり)
  • 妻:月6.8万円(国民年金、満額)
  • 合計:月12.8万円

自営業者の厳しさを象徴するように、Bさん夫婦の年金額は世帯で月12.8万円と、平均を大きく下回ります。特に夫は若い頃の経営難で保険料を納められない時期があり、満額に届かなかったそうです。

「国民年金だけでは生活できないから、70歳になった今も工房を続けているのよ」と奥さんは語ります。夫は週3日、工房で木工製品を作り、月8万円ほどの収入を得ています。奥さんも地域のボランティア活動に参加しつつ、近所のスーパーでパート(月6万円)を継続中。

生活費は月18万円程度で、不足分は子育てが終わった後に貯めた2000万円の貯金を計画的に取り崩しているとのこと。「自営業は年金が少ないと厳しいけど、仕事を続けることで精神的に充実している」という夫の言葉が印象的でした。

「自営業者は国民年金だけだと生活が厳しい。早めに貯蓄や個人年金に加入しておくべきだった」というのがBさん夫婦の教訓です。

我が家の両親は今 ― 年金生活1年半の変化

さて、年金生活を始めて1年半が経った両親の生活は、どう変わったのでしょうか?

「思ったより楽しいよ」と父は笑顔で言います。確かに最初は経済的な不安が大きかったものの、生活にリズムができてきたようです。

母は週3日のパートを続けながら、地域のガーデニングサークルで活動的に過ごしています。「働いているときは時間がなくて諦めていたことができるようになった」と、充実した表情を見せています。

父は釣りの時間が増え、近所の仲間と月に数回出かけています。「職場以外の人間関係が広がって、新鮮だよ」とのこと。

もちろん、経済面での制約はあります。外食の頻度は減り、旅行も近場が中心になりました。しかし、「限られた予算の中で工夫して楽しむ」という姿勢が身についたようで、それはそれで新しい発見があるようです。

「年金生活で一番良かったのは、時間の使い方を自分で決められること」と母。「お金は減ったけど、時間という別の富を手に入れた気分」だと言います。

ただ、父は「健康でいられることが前提だよね」とも付け加えます。実際、最近は健康維持にも力を入れていて、毎朝のウォーキングを日課にしているそうです。

まとめ ― 年金生活を迎える前に準備しておくこと

両親や周囲の方々の体験から、年金生活を迎える前に準備しておくべきことをまとめてみました。

1. 事前準備が鍵

「ねんきん定期便」や年金事務所で正確な受給額を確認し、夫婦で共有しておくことが大切です。特に、手取り額(税金や保険料控除後)を把握することが重要。また、受給開始年齢の選択も慎重に検討すべきポイントです。

2. 生活設計の見直し

年金受給額に合わせて、住居費や医療費を見直しましょう。特に住宅ローンは年金生活前に完済しておくのが理想的です。また、固定費(公共料金、保険料など)の削減も効果的。我が家の両親は、年間で約30万円の固定費削減に成功したそうです。

3. 柔軟な収入源の確保

年金だけでは不足する場合は、パートタイムの就労や趣味を活かした副業、貯金の計画的取り崩しなどを検討するといいでしょう。また、若いうちから投資(iDeCoやNISAなど)を始めておくと、老後の選択肢が広がります。

4. 健康維持の意識

「医療費の負担が予想以上に大きい」と両親は言います。健康でいることが、経済的にも精神的にも豊かな年金生活の基盤になります。定期的な健康診断と予防医療に力を入れることをおすすめします。

5. 夫婦での対話

年金生活は夫婦のライフスタイルが大きく変わる時期。互いの年金額や生活スタイルをオープンに話し合い、具体的なプランを立てることが成功の鍵です。「年金生活になってから初めて、お互いの価値観の違いが表面化した」という話もよく聞きます。

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