春の陽気が感じられるようになると、公園のベンチで本を読む高齢の方や、朝のウォーキングを楽しむシニアの姿を見かけることが増えますね。「リタイア後の生活」と聞くと、そんな穏やかな日常を思い浮かべる方も多いでしょう。でも実は、年金受給者の方々の中には、新たなステージで働き続けることを選ぶ人がたくさんいるんです。
「え?年金をもらってるのになぜ働くの?」と思われるかもしれません。実際、私もそう思っていました。けれど、様々な方のお話を聞いていくうちに、リタイア後の「働く」という選択には、経済面だけでは語れない多くの意味があることに気づいたのです。
今日は、年金受給者の方々が働く理由や、どんな仕事に向いているのか、そして実際に働いている方々の生の声をお届けしたいと思います。もしかしたら、あなた自身や、あなたの大切な方の「第二の人生」のヒントになるかもしれませんよ。
「なぜ働くの?」年金受給者の様々な動機
年金受給者の方々が仕事を探す理由は、実に多様です。最初に思い浮かぶのは「経済的な理由」かもしれませんね。確かに、年金だけでは生活が厳しい、もう少し余裕が欲しいという方もいらっしゃいます。けれど、お話を聞いていくと、それだけではない理由が見えてきます。
「体を動かしていないと、すぐに体力が落ちてしまうんです」 「家にずっといると、どうしても話す相手が限られてしまって…」 「誰かの役に立っている実感がほしくて」 「長年培ってきた技術や知識を無駄にしたくなくて」
こんな声をよく耳にします。つまり、「健康維持のため」「人とのつながりを持ちたい」「社会の中で自分の居場所を感じたい」「これまでの経験を活かしたい」といった目的で、働くことを選ばれる方が実に多いのです。
私の父も定年後、しばらく家でのんびり過ごしていましたが、半年ほど経つと「なんだか毎日同じで、時間の感覚がなくなってきた」と言い始めました。そして週に3日だけ、近所のホームセンターで働き始めたんです。すると、不思議なことに疲れているはずなのに、以前より元気になったように見えました。「予定があるって、こんなに大事なことだったんだな」と父は言っていました。
年金受給者が知っておきたい「在職老齢年金」の仕組み
さて、年金を受給しながら働く場合、知っておきたいのが「在職老齢年金(ざいしょくろうれいねんきん)」という制度です。これは、一定以上の収入がある場合に年金額が調整される仕組みのこと。「調整」と聞くと少し不安になるかもしれませんが、この制度をうまく活用することで、自分に合った働き方を見つけられるんですよ。
簡単に言うと、収入が増えると年金が減ることがある、ということです。ただし、令和4年(2022年)4月からは制度が一部改正され、60歳台後半(65〜69歳)の方の在職中の年金額の調整が緩和されました。とはいえ、収入によっては年金が減額されることもあるので、働く時間や収入のバランスを考えることが大切です。
「制度が複雑で、よくわからない…」という声もよく聞きます。確かに、細かい計算式などは専門的で難しい面もあります。そんな時は、年金事務所の窓口やねんきんダイヤルに問い合わせてみるのがおすすめです。自分の状況に合わせた具体的なアドバイスをもらえますよ。
私の知り合いの70代の男性は、在職老齢年金について調べた上で、「月に10万円程度の収入になるよう調整している」と話していました。「年金が減るのは避けたいけれど、家にずっといるのも退屈だし、ちょっとしたお小遣い稼ぎになれば十分」という考えからだそうです。このように、自分の生活スタイルや希望に合わせた働き方を選ぶことができるんですね。
年金受給者に向いている仕事の特徴とは?
では、どんな仕事が年金受給者の方に向いているのでしょうか?一般的な傾向としては、次のような特徴が挙げられます。
自分のペースで働ける短時間・短日数勤務
まず多いのが、1日の労働時間が短い、または週の勤務日数が少ない仕事です。体力的な負担を軽減しつつ、年金額への影響も抑えられるというメリットがあります。
例えば、マンションやビルの管理人さんは、朝と夕方だけ勤務する「時間帯管理」という形態もあります。また、スーパーの早朝品出しスタッフや、飲食店の開店準備・閉店作業を担当するスタッフなども、短時間勤務が多いですね。
「朝だけ3時間働いて、午後は自分の時間を楽しむ」なんていうライフスタイルを送っている方もいらっしゃいます。仕事で社会とつながりつつも、自分の時間をしっかり確保できる働き方は、リタイア世代に特に人気があるようです。
体への負担が少ない仕事
年齢を重ねると、どうしても体力面での不安が出てきますよね。長時間立ちっぱなしだったり、重いものを運んだりする仕事は、体に負担がかかります。そのため、施設の受付や簡単な事務補助、コールセンター、学校の用務員といった、比較的体への負担が少ない仕事を選ぶ方が多い傾向にあります。
ある70代の女性は、「若い頃は何でもできたけど、今は自分の体と相談しながら働くことが大切」と話していました。週に2日、病院の受付で働いているそうですが、「座りながらできる仕事だから続けられる。患者さんとのおしゃべりも楽しいのよ」と笑顔で教えてくれました。
自分の体力に合った仕事を選ぶことで、無理なく長く続けられるというのは、シニア世代の働き方の大切なポイントだと言えるでしょう。
経験やスキルを活かせる「第二のキャリア」
長年働いてきた分野で培った知識やスキルは、貴重な財産です。定年後もその経験を活かせる場で働くことで、大きなやりがいを感じる方も少なくありません。
専門分野のアドバイザーや相談員、士業(税理士、社会保険労務士など)の補助、パソコンスキルを活かしたデータ入力、さらには趣味や特技を教える講師など、これまでの経験が直接活きる仕事もたくさんあります。
63歳の元小学校教師の方は、現在、学習塾で週に2回、算数を教えています。「子どもたちと接する時間が何よりの喜び。教え方のコツは長年の経験で身についているから、それを活かせるのは幸せなこと」と語ってくれました。長年培ってきたものを次の世代に伝えていく喜びは、何物にも代えがたいものなのでしょうね。
地域や社会との繋がりを感じられる仕事
リタイア後に感じやすい「社会から取り残された感」。これを解消するため、地域や社会との繋がりを持ち、何らかの形で貢献したいという思いから働く方も多くいらっしゃいます。
例えば、学童誘導員(見守り)や図書館の書架整理、シルバー人材センターを通じた地域からの依頼(庭の手入れ、簡単な大工仕事など)は、地域に密着した仕事として人気があります。また、厳密には「仕事」ではありませんが、ボランティア活動を通じて社会参加する方も増えています。
68歳の男性は、「定年まで都心のオフィスで働いていたけれど、退職後は地元に貢献したいと思って」と話し、現在は週に3日、小学校の通学路に立ち、子どもたちの安全を見守っています。「子どもたちから『おはようございます』と元気に挨拶してもらえるのが日課の楽しみになった」そうです。地域との繋がりが、日々の生活に張りと喜びをもたらしているようでした。
未経験でも始めやすい新たな挑戦
「これまでとは全く違う分野に挑戦したい」「特別なスキルはないけれど、何か始めたい」—そんな方向けの、研修制度があるなど未経験からでも始めやすい仕事も増えています。
警備員(研修あり)、ポスティング、簡単な軽作業(商品の袋詰めなど)は、特別なスキルがなくても始められる仕事として人気です。また、最近では高齢者向けのミニ起業セミナーなども開催されており、趣味を活かした小さなビジネスを始める方も増えています。
「定年後に何か新しいことを始めるなんて、最初は怖かった」という66歳の女性。現在は週に3日、ホテルのベルスタッフとして働いています。「でも勇気を出して飛び込んでみたら、親切な人ばかりで、研修も丁寧だったから安心して働けるようになったの。いつもお客様に『ありがとう』と言ってもらえるのが嬉しくて、毎日が楽しいわ」と話してくれました。新しい一歩を踏み出す勇気があれば、未知の世界での新たな喜びに出会えることもあるんですね。
リアルな声で知る「働く年金受給者」の日常
それでは、実際に年金を受給しながら働いている方々の体験談をいくつかご紹介しましょう。皆さん、それぞれの理由や目標を持って、いきいきと「第二の人生」を歩んでいます。
【体験談1:健康維持と社会参加】父の表情が明るくなった短時間バイト
「父が定年退職後、家にいる時間が増えて元気がなくなってきたんです。テレビを見る時間が増え、趣味だった釣りにも行かなくなって…。このままではいけないと思って、何か体を動かせて、人とも話せる仕事がないかな、と探しました」
こう話すのは、70代の父親を持つ50代の女性です。
「近所のスーパーの品出しのパートを見つけて、父に提案したんです。最初は渋っていましたが、『試しに行ってみたら?』と背中を押して。それが大正解でした。週に3日、午前中の3時間だけという短い時間ですが、適度に体を動かすし、お店の人やお客さんと挨拶したりするのも楽しいみたいで、すごく明るくなりました」
仕事を始めてからの変化は、家族の目から見ても明らかだったそうです。
「『年金だけじゃ味気ないけど、自分で稼いだお金で孫にお菓子を買ってやるのが嬉しいんだ』って言って、生き生きしています。何より毎朝、時間通りに起きて身支度をして出かける、という生活のリズムができたことが良かったみたい。健康診断の数値も良くなりましたし、私たち家族も安心しています」
適度な運動と社会との接点、そして「誰かの役に立っている」という実感。こうした要素が組み合わさることで、リタイア後の生活が豊かになっていく例は少なくないようです。
【体験談2:経験を活かせる喜び】長年の経理スキルが今も役立つ
「私は定年までずっと企業の総務部で経理を担当していました。退職してからも、何か社会との繋がりを持っていたくて、シルバー人材センターに登録したんです」
68歳の女性は、週に一度、小さな商店の経理事務を手伝っているそうです。
「最初は『もう仕事は十分やったから、のんびり過ごそう』と思っていたんです。でも、いざ毎日自由になると、かえって時間を持て余してしまって。テレビを見たり、家事をしたり、たまに友人とランチに行ったり…それも良いんですけど、何か物足りなさを感じていました」
そんな時、地域のシルバー人材センターでの説明会を知り、参加したことが転機になったと言います。
「そこで『経理の経験がある方、募集中』という案内を見つけて。週に一度だけの仕事だけど、長年やってきた経理の仕事が役立つなら、と思って応募しました。今の職場は小さな商店で、大企業とは違って家族的な雰囲気。仕事内容は難しくないけれど、これまで培った知識やスキルが役に立っている、必要とされている、と感じられるのが何よりのやりがいです」
さらに、予想外のメリットもあったと笑顔で教えてくれました。
「新しい会計ソフトを覚えるのも脳の刺激になって、ボケ防止にも良さそうです(笑)。若い店長さんが『いつもありがとうございます』と言ってくれるのも嬉しいですね。年齢を重ねると、誰かに感謝されることって、以前より嬉しく感じるものなんですよ」
長年培ってきた専門知識やスキルは、定年後も十分に活かせる貴重な財産。それを必要としている場所が、必ずあるということを教えてくれる体験談でした。
【体験談3:年金額とのバランスを考えて】収入と自由時間のベストミックス
「年金をもらいながら働く上で一番気にしたのは、働きすぎて年金が減らないか、ということでした」
こう話すのは、65歳で定年退職し、現在67歳の男性です。退職前は建設会社で働いていたそうですが、今は警備員として週に3〜4日働いています。
「退職金はあったんですが、二人の子どもの大学費用でほとんど使ってしまって。それで、年金だけではちょっと生活が厳しいと思ったんです。かといって、フルタイムで働くのは体力的にもしんどいし…」
そんな悩みを抱えて、ハローワークに相談に行ったそうです。
「ハローワークで相談したら、在職老齢年金について詳しく教えてくれて。収入によって年金が減る仕組みを知った上で、どんな働き方が自分に合っているか考えることができました。それも踏まえて、働く時間や日数を自分で調整しやすい警備員の仕事を選びました」
警備員を選んだ理由については、こう説明してくれました。
「夜勤だと日中の時間が使えるし、シフト制なので『この日は孫の運動会だから休みたい』なんて希望も出しやすいんです。何より、同年代の仲間が多いのが心強いですね。収入は年金で賄いきれない分のお小遣い程度ですが、生活にハリが出ました」
さらに、予想外の喜びもあったと言います。
「実は警備の仕事を始めてから、自分の姿勢が良くなったみたいなんです。妻に『背筋が伸びて、若々しくなった』って言われました(笑)。立ち姿を意識する仕事だからなのかもしれませんね。制服を着るというのも、意外と気分が引き締まるものなんですよ」
年金受給者の働き方は、収入面だけでなく、ライフスタイルや健康面など、様々な要素のバランスが大切。この体験談は、自分に合った「最適解」を見つけることの大切さを教えてくれます。
【体験談4:新たな学びと貢献】スマホ講座のサポーターという新たな挑戦
「私はリタイア後に、地域が運営している高齢者向けのスマホ講座のサポーターを始めました」
72歳の男性は、元々は製造業の品質管理の仕事をしていたそうです。IT関連とは全く違う分野でしたが、今ではすっかりスマホの達人になっていました。
「前職でIT系の仕事ではなかったのですが、自分自身がスマホ教室に通った経験があったので、その経験を活かせるかなと思って。最初は自分でも『教える側になれるのか?』と不安でしたが、同じ年代の方々の『わからない』に共感できるからこそ、丁寧に説明できることもあるんだと気づきました」
活動を始めて3年になるという彼は、この仕事でたくさんの喜びを見つけているようです。
「生徒さんたちがスマホを使いこなせるようになって喜ぶ顔を見るのが本当に嬉しいですし、自分も新しいアプリの使い方などを生徒さんから教えてもらったりして、常に新しい刺激があります。先日も、80代の方がLINEでお孫さんと写真を交換できるようになって、涙を流して喜んでくれたんです。そういう瞬間に立ち会えるのは、この仕事ならではの喜びですね」
さらに、スマホを教えることで自分自身にも変化があったと言います。
「家にこもっているより、ずっと心身ともに元気でいられます。何より、毎週の講座に向けて新しい情報を調べたり、資料を作ったりするのが楽しくて。『何か人の役に立てている』という実感があるから、朝起きるのが楽しみなんです」
経験を次の世代に伝える喜び、新しいことを学び続ける刺激、そして社会貢献の充実感。これらすべてが、リタイア後の生活を豊かにする要素になっているようです。
第二の人生を充実させる仕事探しのコツ
これまでの体験談から、年金受給者の方々がそれぞれの目的やライフスタイルに合わせて、様々な働き方を選択していることがわかりましたね。最後に、あなた自身やご家族が「第二の人生」の仕事を探す際のヒントをいくつかご紹介します。
自分の「働く目的」を明確にする
まず大切なのは、「なぜ働きたいのか」を自分自身に問いかけてみることです。経済的な理由なのか、健康維持や社会参加が目的なのか、それとも培ってきた経験を活かしたいのか…。目的によって、選ぶべき仕事の種類や働き方が変わってきます。
「とりあえず何か仕事を」と考えるより、「こういう目的だから、この仕事が良いかも」と具体的に考えることで、自分に合った仕事が見つかりやすくなります。
無理のない働き方を選ぶ
体力や健康状態、家庭の事情なども考慮して、無理のない働き方を選ぶことも重要です。フルタイムが難しければ、短時間勤務や週2〜3日の仕事を探す。立ち仕事が辛ければ、座ってできる仕事を選ぶ。そうした「自分に合った条件」を整理してから仕事を探すと良いでしょう。
「若い頃のように働けるはず」と無理をすると、かえって健康を損ねてしまうこともあります。年齢に応じた働き方を選ぶことが、長く続けるコツです。
専門機関を活用する
仕事探しは一人で悩まず、専門機関に相談するのも効果的です。ハローワークには「生涯現役支援窓口」があり、高齢者の就労に詳しい相談員がサポートしてくれます。また、各地域のシルバー人材センターでは、登録すれば地域の様々な仕事の紹介を受けることができます。
ほかにも、自治体が運営する高齢者向け就労支援センターや、民間の人材紹介会社など、様々な支援機関があります。これらを上手に活用することで、より自分に合った仕事が見つかる可能性が高まります。
趣味や特技を活かす発想も
「仕事」と聞くと、これまでのキャリアの延長線上にあるものを考えがちですが、趣味や特技を活かした働き方も検討してみてはいかがでしょうか。
料理が好きならカフェやレストランの厨房、園芸が趣味なら花屋や園芸店、語学が得意なら通訳や翻訳のアルバイトなど、これまでの「仕事」とは全く違う分野でも、自分の好きなことなら楽しく続けられるかもしれません。
「定年後に始めた趣味が今の仕事になった」という方も意外と多いのです。
おわりに:生涯現役で輝き続けるために
年金受給者が働くことには、経済的なメリットだけでなく、健康維持や社会参加、生きがいの創出など、様々な意義があります。年金をもらいながら「自分らしく」働くことで、より充実した「第二の人生」を送ることができるのです。
大切なのは、自分の体力や希望、生活スタイルに合った働き方を見つけること。無理せず、できる範囲で、そして何らかの形で楽しみややりがいを感じられる仕事を選ぶことが、充実したセカンドライフの鍵と言えるでしょう。
現代の日本は、かつてないスピードで高齢化が進み、多くの方がリタイア後も長い時間を過ごすことになります。その時間をどう使うか、どう生きるかは、完全に自分次第。新しい可能性に挑戦し、自分なりの「生涯現役」のスタイルを見つけることで、人生100年時代をより豊かに、より輝かしいものにしていきたいですね。
あなたやあなたの大切な人が、「働く」という選択を通じて、新たな喜びや発見に出会えることを願っています。
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